コロナ禍における若者・子どものメンタルヘルス 中央大学人文科学研究所 客員研究員 髙橋聡美

慢性的なストレス

コロナ禍3年目を迎え、一旦収束したかのように見えた感染拡大が今、第六波となって、社会を大きく揺るがしています。内閣府の調査によると自粛生活でコロナ疲れを「感じる」「やや感じる」と答えた人は7割を超え、女性や若者の自殺も増えています。

鹿児島県内の感染者数も今までになく増え、感染への不安はもちろんですが、とりわけ若い世代は、学生のうちにしかできないことを我慢し大人になってしまいます。

ソーシャルディスタンスでもたらされた孤立

ソーシャルディスタンスは、そもそもウイルス感染拡大を防ぐための物理的な距離の意味あいでしたが、いつしか人と人のつながりも奪われているように感じます。

この1年、若いお母さんたちからの心の相談が増えています。出産・子育て世代の人も妊娠期間中人に会えなかったり、お産の時に実家の手伝いをもらえない、里帰り分娩ができないなど妊娠から出産までの経過で孤立しがちです。子育てサークルのような集まりも開催されないため子育てが「孤育て」になっているのだと思います。また、全国各地、子どものコロナ感染者が増え、家族内感染も増加していることから、子どもも保護者も学校も今まで以上に不安に満ちています。

コロナ禍の影響は平等には起きない

「みんな、我慢して乗り越えよう」と本来励ましとなる言葉は、行き過ぎると「みんなやって当たり前」という同調圧力となり、生きにくい社会を作り出します。

コロナ禍で大変なのは「みんな同じだ」と多くの人は言います。しかし、同じ自粛状況下にあっても年齢・性別・職業・趣味・これからの目標などで、「心理的負担」は全く異なります。おうち時間がもともと好きだった人にとっては自粛はそれほど苦痛ではないでしょう。逆に外食や人と会うことを楽しみにしていた人はストレスが大きくなるでしょう。DVや虐待などの問題を抱えていた家庭では家庭内の緊張がさらに強まったでしょう。

さらに子どもの2年と大人の2年も、全く異なります。

子どもたちが喪失したもの

我が国のコロナ対策は学校の休校措置から始まりました。私たち大人は、もしかしたら子どもたちへの影響を過小に評価していたかもしれません。長期にわたるコロナ禍でメンタルの不調を訴える子どもが全国的に増えています。気分が沈むなどの心の不調だけでなく「お腹が痛い」「頭が痛い」などの身体症状として現れることもあります。

運動会・修学旅行・文化祭など楽しみにしていた行事が縮小・中止になりました。また自分の力が発揮できる試合やコンクールも中止になり、自分らしさを発揮する場も失われています。楽しい給食の時間も黙食です。子ども・若者の間にしかできないことをできずに過ごしています。2020年に入学した中高校生は1年2年をコロナで過ごし、残る1年は進路を決める学年となります。進路や将来の見通しが立たない、リモート授業になって友達ができない、就職しても職場の人と親睦を図れないなど、人生設計や人との関係性の構築ができにくくなっています。若い時の2年自粛というのは、情緒発達や人間関係構築にも影響を与えていくだろうと思います。まだまだ感染の収束のめどが立たない状況にありますが、その間も子どもたちは心も体も成長していきます。

コロナ禍で子どもたちが自分らしさを発揮できる場所を持てるよう最大限の努力をしていかなえければならないと思います。次の時代を作っていく子どもたち。コロナ禍で思いやりを学び、優しい世代となるように、私たち大人が他者に対し寛容で思いやりのある姿をみせていかなければならないと感じています。

プロフィール

中央大学人文科学研究所 客員研究員 髙橋聡美◇中央大学人文科学研究所 客員研究員 髙橋聡美
◇一般社団法人髙橋聡美研究室代表理事。中央大学客員研究員。医学博士。
◇南さつま市出身。スウェーデンでの調査従事、防衛医科大学校等で講師や教授を勤め、現在は心の健康づくりや自殺対策に関する普及啓発や講演会で活躍中。
◇著書、メディア出演、多数。